FXの自動売買(EA)が「稼げない理由」を暴露します
「何もせず、ほったからしで稼げる」
「月利〇%の負けなしシステム」
自動売買(EA)を販売する業者がよく使うフレーズです。非常に魅力的な言葉です。私も思わず前のめりになります。
本当に稼げる自動売買が存在するのならば、“投資家の夢のシステム”とも言えるでしょう。
しかし、その現状は惨憺(さんたん)たるものです。
稼ぐどころかどんどん損失が膨らんでいき、何を根拠に取引をしているのかも分からない。金銭的にも精神的にもストレスを抱えるケースがほとんどです。
冷静に見れば「明らかに怪しい」と判断できそうなものですが、「もし本当なら…?」と誇大な表現に心を揺さぶられてしまい、高額なシステムを購入してしまう人も多いでしょう。
私も自動売買で大損した経験がある
実は私も初心者の頃、購入して運用したことがありました。
右肩上がりに資産も上昇して、「このままいけば億万長者も夢ではない」という感じで、追加で資金を投入てみたものの、大幅ドローダウンに陥り、自分で損切りしました。。。高い授業料になった経験があります。
では、なぜFXの自動売買は「販売業者のうたい文句通り」に勝てないのでしょうか?それには、明確な理由があります。
FXの自動売買が「稼げない理由」
自動売買が稼げない理由は、主に以下の3つです。
- 資金の問題
- メンタルの問題
- ロジック(取引ルール)の問題
FXの自動売買が稼げない理由は、ほぼこの3つです。
もし「自動売買で稼ぎたい」と考えている方がいれば、私は「絶対にやめておくべき」とお伝えしておきます。
その理由を以下にまとめます。
①資金の問題(ドローダウン)
自動売買を運用する中で1番恐れるべきことは「ドローダウン」です。ドローダウンとは、運用資金に対して「どれだけの損失が出たか」を表す指標です。資金の目減り率といったところです。
よくバックテスト(※①)の成績で、損失に耐えながら右肩上がりのグラフが表示されていることがあります。本当に増えていくものだとしても、運用している途中のドローダウンには耐えられないことがほとんどです。(※①)バックテスト/過去の相場でテスト的に運用すること
なぜ、自動売買は「ドローダウン」に耐えられずに破産するケースが多いのか?
その理由が以下の2つです。
相場の不確実性(想定外な状況)
相場は不確実なものであり、過去と違った値動きをするのが常です。
値動きをパターン化した理論は無数にありますが、それもあくまで判断材料の1つでしかなく、その通りの値動きになるとは限りません。
トレードで勝つためには「相場の状況に合わせて有効な手段を取る」ことが基本です。
それだけ相場は不確実なものであり、簡単なパターンで攻略できるものではありません。そんな不確実な相場において、過去のパターンしか知らないロジックでは”想定外な状況”に対応できないのです。
実際のドローダウンは予想以上に大きい
もう1つ、ドローダウンで破産するケースとして「ドローダウンが予想以上に大きい」という事が挙げられます。
じつは、自動売買の長期間のバックテストの最大ドローダウンは、グラフで見るとそれほどでもなかったりしますが、実際にはかなり大きなドローダウンを喰らっています。
もし、スタートした時からまもなくその大きなドローダウンがきたらどうでしょうか…?
ひとたまりもありません。当然、強制ロスカットになることは目に見えています。
どれだけの資金量で運用しているかにもよりますが、大きな変動となるドローダウンには、ロスカットを喰らうケースが多くあります。
もし、仮に資金量で耐えられたとしても、さらにもう1つの問題があります。
②メンタルの問題
仮にドローダウンに対して資金量で耐えられたとしても、メンタル的に耐えられなくなります。
自動売買なのでメンタルは関係なさそうに思えますが、そんな事はありません。むしろ、裁量トレードよりもメンタルが削られます。
その理由は、どういったロジック(取引ルール)でトレードをしているのか分からないからです。
こんなトレードを見ていたら、胃が痛くなることは間違いないでしょう。損切りで仕切り直してトレードが出来る中で、どこでポジションを持ち・どこで決済をするのか不明な状況。
普通の人なら、まずメンタルがもちません。
資金面、そして精神衛生面で多きな負担を強いられることになるでしょう。
③ロジックの問題(有効性)
自動売買が稼げない3つ目の理由はこちらです。そもそも「ロジック(取引ルール)に有効性がない」という事。これは”稼ぐ稼げない以前の問題”で、話しになりません。
「そんな馬鹿な」と思われるかも知れませんが、じつはこのケースが非常に多かったりします。
FXの自動売買というのは、過去の相場でデモトレードを行い、そのロジックの有効性を判断したうえでシステム化されます。本来なら、そのロジックの有効性を判断する為の実運用も行われます。
長期間の実運用の成績をもってはじめて、自動売買の有効性が判断されます。
しかし、“過去の相場で有効なロジックを組むこと”で、あたかも優秀なシステムに見える成績を生み出すことも出来るのです。
過去の成績が良ければ、あたかも優秀なロジックにも見えます。しかし、じつはここに「大きな落とし穴」があります。
過剰最適化「カーブフィッティング」
それが、「カーブフィッティング」と呼ばれる行為です。
すでに結果が出ている相場に合わせ、優秀なロジックに見えるように“過剰に最適化された取引ルール”に仕上げる行為。これがカーブフィッティングです。
過去の相場”だけ”で勝てるルールに仕上げただけ。結果論ベースのロジックなわけです。
しかし前述の通り、“相場は不確実なもの”です。ですので、どれだけ過去の相場で有効だとしても、これから先も有効とは言えないのです。
※カーフィッティングについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
目次1 「カーブフィッティング」とは?~FX自動売買の実績の裏話~「カーブフィッティング」とは?~FX自動売買の実績の裏話~FXの自動売買システムを選択する時に、過去の相場で[…]
自動売買システム(EA)の販売利益が目的の業者がほとんど
自動売買は、本来「いかに効率良くトレード利益を積み上げられるか?」というのが目的です。
しかし、巷で販売されている自動売買システムは「システムをどれだけ売って稼ぐか?」が目的になってしまっています。
購入したユーザーの勝敗は関係ありません。システムを売ってなんぼの立場です。
そんなシステムに、本当に有効性があるのでしょうか?
史上最強のヘッジファンドでさえ破綻
そもそもですが、全員が同じプログラムを使って売買したとところで、FXのシステム上、全員が同じ様に勝てる世界ではありません。
これは、ノーベル賞学者を要し、史上最強の運用チームを結成し運用したLTCMというヘッジファンドの破綻からも読み取れます。この時は4年間は順調でしたが、一気にその情勢は変わりました。
最高の金融工学理論を用いて、最高の頭脳集団が作成したプログラムが破綻するという事実があるのに、我々一般人が手放しで運用して大きく儲けられるでしょうか?
まず、ありえないでしょう。
自動売買で稼ぐFXトレーダーもいる
ここまで、自動売買に対して否定的な内容をまとめてきました。
こうして見ると「自動売買で稼ぐことはそもそも不可能なのか」と思われるかも知れません。
しかし、自動売買で“ちゃんと稼げているFXトレーダー”は、じつは存在します。
自動売買で破綻するFXトレーダー、自動売買で着実に利益を上げているトレーダー。
両者の違いはどこにあるのでしょうか?その違いをまとめてみます。
自動売買で稼ぐトレーダーは裁量トレードでも稼ぐことができる
自動売買で稼いでいるトレーダーというのは、じつは裁量トレードでも稼ぐことが出来るトレーダーです。自分なりに有効だと考えるトレード手法を持っています。
多くの人が誤解しがちな「自動売買=手放しで稼げるシステム」といった考え方ではなく、「自動売買=効率良く運用する1つの方法」として、自動売買を取り入れているわけです。
自分なりに有効だと考えるロジックを元にトレードを行う為、「ポジションを持つタイミング」や「決済を行うタイミング」も把握しています。
なので、仮にイレギュラーな状況に陥ったとしても、損切りやシステムの停止などの適切な措置をとることができる為、資金管理やメンタルで揺さぶられることも避けることが出来るのです。
さらには、ロジックの有効性は自分がよく分かっている。
ここまでお伝えしてきた自動売買が稼げない理由を、全てクリアしているわけです。
とはいえ、そんなトレーダーでも常に相場の状況に合わせてロジックを調整しながら運用しているのです。
もし自動売買で稼ぐとすれば…
結局、自動売買で稼ぐ為には「自己判断で裁量的に運用できる人」でなければ難しい、というのが私の意見です。
全ての判断をシステムに委ねるのではなく、相場の状況に合わせたロジックの調整や動かすタイミングを見定め運用すれば、稼ぐことは出来るでしょう。
多くの人が考える「完全にほったらかしで稼ぐ”夢のようなシステム”」はないと思ってください。
結局は裁量で判断するトレードレベルが必要
自動売買を活用するにしても、結局はその良し悪しを裁量で判断できるトレードレベルが必要です。
FXの自動売買は「自動売買”のみ”で稼ぐ」というより「自動売買を”活用して”稼ぐ」という事になるので、トレーダーとしてはどのみちトレードレベルを上げることは必須です。
はじめは難しいことばかりで自動売買に頼りたくなる気持ちも分かりますが、どのみち学ばなければ勝てないものなので、早いうちにトレード学習なりデモトレードなりをしておくべきでしょう。
相場観を磨く努力を
トレードには「相場観」という言葉があります。カンみたいなものですが、確度が高い”カン”です。
マーケットでの経験が長くなると、言葉では言い表せないようなものが身につくことがあります。
マーケットは、コンピュータと戦っている感じがありますが、結局は「人対人」の思惑が絡んで出来上がったものが、チャートに表れます。
ですので、人間心理が生み出すニュアンスを感じ取り、トレードしていくことが結果的に勝ちに繋がります。
大きな動きの時に事前に察知、察知できなくても臨機応変に対応できるのが「人間の強み」でもあり、トレードで勝つために必要なスキルです。
この部分は、まだまだAIやコンピュータは弱い部分です。
トレードで勝つ方法は1つではない
もし、自動売買だけに頼って取らぬ狸の皮算用をしているのであれば、今すぐにやめてトレード力を上げていく努力をしていきましょう。そのほうが後々良い結果を生みます。
トレードで勝つ方法は、1つではありません。勝つ人の感覚は、自分が持っている感覚と異なることも多いです。
そして、FXには「トレード手法」以外にも「資金管理」や「メンタルコントロール」等も必要です。
自分なりのトレード手法や相場観を身につけながら、着実に安定したトレードを身につけていきましょう。